デロイト、AIへ全力投資もAI利用で巨額返金の実情と今後課題
コンサルティング大手の Deloitte は、Anthropic との画期的な AI 企業向け契約を発表したのと同じ日、政府が受託した報告書に AI が生成した不正確な内容が含まれていたとして返金を行う予定であることを公表した。
結論として、Deloitte と Anthropic の契約は、同社の AI へのコミットメントを問う踏み絵のような意味を持ち、技術と向き合いながら取り組みを進めている。Deloitte がこの挑戦に直面しているのは同社だけではない。
この発表のタイミングは興味深く、滑稽ですらある。というのも、Deloitte が AI の活用拡大を強調した同日、豪州のDepartment of Employment and Workplace Relations は、同省向けに作成した報告書に AI の幻覚が含まれていたとして返金を求められることになると報じられたと、Financial Times が伝えた。
同省は Deloitte に対し豪ドル439,000の「独立保証レビュー」を委託しており、今年初めに公表された。Australian Financial Review は8月、同レビューに数々の誤りが含まれており、存在しなかった学術報告への複数の出典が示されていたと報じた。修正版は先週、同省のウェブサイトにアップロードされた。Financial Times は、Deloitte が政府契約の最終分を返済する予定だと伝えた。
TechCrunch は Deloitte へのコメントを求めて連絡を取り、同社の回答があれば記事を更新するとしている。
Deloitte は月曜日、Anthropic のチャットボット Claude を世界約50万人の従業員に展開する計画を発表した。昨年に提携を結んだ Deloitte と Anthropic は、金融サービス、医療、公共サービスを含む規制対象産業向けのコンプライアンス製品・機能の開発を進める計画だと、Anthropic のブログ投稿が伝えている。CNBC の報道によれば、Deloitte は会計部門やソフトウェア開発部門など、社内の異なる部門を示す AI エージェントの「パーソナ」を複数作成する予定という。
「Deloitte は Anthropic の AI プラットフォームへのこの大規模な投資を進める理由は、責任ある AI へのアプローチが非常に整合しており、共に今後の10年間で企業の運用を再構築できると信じているからだ。Claude は今後も多くの顧客にとって有力な選択肢であり、我々自身の AI 変革にも寄与している」と、Deloitte のグローバル技術・エコシステムおよびアライアンス責任者の Ranjit Bawa はブログで述べた。
この契約の金銭条件は公表されていない。Anthropic はこれを「アライアンス( alliance )」と呼んでいるが、詳細は明らかにされていない。
この契約は Anthropic にとって最大級のエンタープライズ展開であるだけでなく、AI が職場でのツールから家庭での気軽な問いまで、現代生活のあらゆる場面に浸透していくことを示す事例でもある。
Deloitte は唯一の例ではなく、近月も誤った AI 生成情報の使用で問題視されている企業や個人が見られる。5月には Chicago Sun-Times が AI 生成の本リストを夏の読書リストとして掲載してしまったことを認め、読者が実在の著者であっても書名が幻覚的だったと指摘した。Business Insider が入手した内部文書は、Amazon の AI 生産性ツール「Q Business」が初年度の正確性に課題を抱えていたことを示している。
Anthropic 自体も、同社のチャットボット Claude からの AI 幻覚情報を自社の出典として用いたとして批判を浴びた。今年初めには、音楽出版社との法的争いで AI 生成の出典を使用したことをめぐり、同社の弁護士が謝罪している。
