不安定な年に焦点を当て、有望な気候技術企業の選定方法を徹底解説
MIT Technology Reviewの記者と編集者は、今年の「Climate Tech Companies to Watch」候補を検討し始めたとき、ジレンマに直面した。極度の不確実性が支配するこの時代に成功を収める見込みのある企業をどう選ぶべきか。新政権の下で気候変動の危険性を過小評価し、クリーン技術を支える政策を弱体化させ、複数の産業のコストを押し上げ、供給網を乱す関税を導入する動きがある時期に。
本紙は、気候変動の脅威の高まりに対処できる技術を開発する企業の特定に重点を置く一方、純粋に市場の成功を狙う企業の選定を目的とはしていない。株式銘柄の選定者や金融アナリストとして自認しているわけではない。
しかし、読者を誤導することは避けたい。6か月後に破産申立てをする可能性のあるスタートアップを取り上げる場合、その崩壊が政策の急激な変化という外部要因によるものだとしても、読者を混乱させるおそれがある。
そこで見方を多少転換せざるを得なかった。
基本原則として、温室効果ガス排出量を大幅に削減する潜在力を持つ企業、あるいは熱波・干ばつ・その他の極端な気象の危険を地域社会が意味のある形で低減できる製品を提供する企業を重視する。
資金調達・プラント建設・製品の提供など、実績を積んできた企業を取り上げることを好む。一方で、核となる事業が化石燃料の採掘・燃焼に関わる企業は、再生可能エネルギーの副業を持つ場合でも原則として除外する。強制労働などの問題ある慣行に結びつく企業も同様に除外する。
記者と寄稿者は初期案をスプレッドシートに追加する。学者、投資家、信頼するほかの情報源に候補を求める。さまざまな候補を調査・討議し、リストに追加・削除を行い、再度全候補を調査・討議する。
長期的な調査を喪失すれば、気候変動を追跡・対処・適応する能力に影響を及ぼすおそれがある。
2023年に初めての「Climate Tech」リストを作成して以降、地理的に多様な最終構成を目指してきた。しかし、近年の米国内での気候技術分野の特有の課題を踏まえ、初期の方針として海外で前進している企業をより厳しく、より広く探すようにした。
幸いにも、多くの国が高まる脅威に立ち向かう必要性と、それに伴う経済機会を信じ続けている。
中国は特に、エネルギー転換を経済成長と世界的影響力拡大の道として取り込み、世界最大級かつ最も革新的なクリーン技術企業を生み出してきた。今年のリストにはその代表例が2社含まれており、ナトリウムイオン電池のHiNa(ハイナ)と風力タービンの巨頭Envision(エンビジョン)を挙げる。
同様に、欧州連合の厳格化する排出規制と排出量取引制度は、エネルギー・重工業・運輸部門の脱炭素化を加速している。ここではドイツの電動トラック企業TratonとスウェーデンのクリーンセメントメーカーCemvisionの2社を有望企業として取り上げた。
米国の状況変化から比較的無傷で生き残る企業、あるいはそれを機会とする企業もあると判断した。特に、重要鉱物の輸入コストを押し上げる関税の高まりが、Redwood Materialsのような米国最大級の電池材料リサイクル企業には有利に働く可能性がある。
さらに、AIデータセンターの開発ブームは新たな電力需要を生み出し、電力供給の拡大機会を生む。地熱企業Fervo Energyや次世代原子力スタートアップKairos Powerなど、カーボンフリーのエネルギー源を通じてその需要に応える体制が整っている候補がいくつかある。Redwood Materialsはこの需要にも対応する新たなマイクログリッド事業を開始している。
それでも、今年は世界に公表できるほど自信をもって挙げられるリストを作るのが特に難しく、15社を10社に絞る決断の大きな要因となった。
とはいえ、世界各地で実質的な進歩を遂げ、企業の活動と日常の在り方をクリーン化するうえで確かな布陣を築いており、今後の気候課題の克服を支える有望な陣容と見なせる企業群を特定したと信じている。
読者も同様にそう感じることを願う。
